この記事では仮想通貨をはじめとする投資における利益に対する税金について、オーストラリアではどうなっているのかを説明します。
ビットコインをはじめとする仮想売通貨は英語ではCryptocurrencyで、日本語で正しくは暗号通貨、または、暗号資産と呼ばれていますが、ここでは、最も一般的に使われている呼称である「仮想通貨」を使います。
ここで説明する内容は、仮想通貨だけでなく、不動産、株式、為替などの投資での利益に対する税にもあてはまります。
はじめに
オーストラリアでは、収入の手段、事業や職業の種類、そして、雇用形態や収入の頻度に関係なく、収入があった各個人が年に一度、日本でいう確定申告にあたるタックスリターンを行います。
ちなみに、オーストラリアの会計年度は6月~7月で、タックスリターンも会計年度毎に行う必要があります。オーストラリアの税法上、仮想通貨は株などの投資資産と同じ扱いとなります。
仮想通貨や株を購入して保持しても税金は掛かりませんが、売却したら税金の対象になります。利益が出た時は利益分の額に税金が適用されます。損失が出たなら、利益と相殺でき、課税対象となる利益額から損失額を引くことができます。利益より損失の方が大きければ税金は発生しません。
税率
オーストラリアでは仮想通貨の利益に対して特別な税率が設定されるはことはなく、通常の所得税(Income Tax)の税率が適用されます。
税率は、通常のオーストラリア在住者ならば、年間の所得額の$18,200までは0%、$18,201以上$37,000までは19%、$37,001以上$90,000までは32.5%、$90,001以上$180,000までは37%、$180,001以上は45%となっています。
メディケアに加入している人は上記の税率に加えて所得総額の2%がメディケアレビー(Medicare Levy)として徴収されます。
仮想通貨で得た利益は、年間の所得の一部として計算され、総所得に対して上記の税率で課税されます。
仮想通貨だけでなく、株や為替、不動産でも同じ扱いです。
税率についてについて詳しくは、ATO(オーストラリア国税局)のホームページでご確認いただけます。
Capital Gains Tax(キャピタル・ゲインズ・タックス)
オーストラリアの税法上、仮想通貨の利益に関する税は、Capital Gains Tax(キャピタル・ゲインズ・タックス)に分類されます。
仮想通貨に限ったことではありませんが、何かに投資して利益を得た場合はキャピタルゲインとなり、損失を出した場合はキャピタルロスとなります。
キャピタルゲインとキャピタルロスに対しては、Capital Gains Tax(キャピタル・ゲインズ・タックス)、省略してCGTが適用されます(以下記事中ではCGTと記載します)。CGTの対象となるのは、仮想通貨、株式、為替、不動産などです。
オーストラリア居住者は、海外の資産の売買に対してもオーストラリアのCGTのルールが適用されますので、ATO(オーストラリア国税局)への申告が必要です。
キャピタルロスを出した場合は、キャピタルゲインと相殺できます。すなわち、投資で出した損失額は利益額から差し引いて申告することができますので、課税額が少なくなります。
購入から1年以上経過した後に、売却して利益(キャピタルゲイン)が出た場合は、利益に対しての課税が50%に減税されます。
逆に、1年以上経過した後に、売却して損失(キャピタルロス)が出た場合は、損失額分を翌年度以降に繰り越すことができます。つまり、その年に出たキャピタルゲインと相殺しきれないキャピタルロスは、翌年以降に出るキャピタルゲインの利益と相殺できます。繰り越できるのは、1年以上保持して売却した際のキャピタルロスが対象となります。
ですから、購入と売却の記録は非常に重要です。利益だけでなく、損失の記録も重要になるのです。
また、仮想通貨や株の投資に関するCGTは、投資を事業としている場合を除いては、メインの収入とは別扱いで処理されなければなりません。ここでいうメインの収入とは、事業主ならば事業収入、会社勤めなら雇用主から得る給与収入のことです。
例えば、事業をしていて損失があっても仮想通貨の売買での利益と相殺できません。その逆もしかりです。個人のタックスリターンは、メイン収入も投資収入も所得として一緒に行いますが、CGTのルールを双方にまたがって適用することはできません。
CGTについて詳しくは、ATOのホームページでご確認いただけます。
キャピタルゲインとキャピタルロスの税金は複雑ですので、信頼できるプロのアカウンタントにお任せすることをおすすめします。
仮想通貨どうしの取引でも税が発生
仮想通貨を売却した時点で税金の対象となりますが、仮想通貨から仮想通貨に替えた時点でも、売却とみなされ税金の対象となります。
課税額は、売買時の仮想通貨の価値をオーストラリアドルで換算した記録に基づいて計算します。
例えば、ビットコインをイーサリアムに替えた場合は、ビットコインを売って、イーサリアムを買ったとみなし、オーストラリアドルなどの法定通貨に替えていない場合でも税金の義務が発生します。
ビットコインを買った時に支払った通貨が、例えオーストラリアドルではなくて、他の仮想通貨であっても、その時点のオーストラリアドル換算での金額で税金を計算する必要があります。
この場合、ビットコインを買った時点の価格(オーストラリアドル換算)と売った時点の価格(オーストラリアドル換算)に利益が出たら、利益分の金額が税金の対象となります。
2020年12月10日に1ビットコインをテザーで買って、2021年1月10日に売って全てイーサリアムに替えました。
この場合は、1BTCの12月10日の買った時の価格をオーストラリアドル換算すると$24,000AUD、1月10日の売った時の価格が$50,000AUDとなったので、利益は$26,000AUD。この利益に上記の所得税率を適用します。
オーストラリアドルに替えた時だけでなく、仮想通貨から仮想通貨への売買も税金の対象になるとは、頻繁に売買をするトレーダーには非常に面倒ですが、きちんとやっておかないと後で、もしATOの調査の対象となった時にまずいことになります。
仮想通貨での決済
保持している仮想通貨で商品やサービスの支払いをした場合は、支払いをした時点で、仮想通貨を売却したことと同様にみなされ、支払いに使用した仮想通貨を購入した時と比べて利益が出ていれば税金の対象となります。
逆に、損失が出ていれば、CGTのルールに従って利益の相殺に使うことができます。
小額の仮想通貨を支払いの手段として購入し、即サービスや商品の購入に使用した場合は課税の対象にはなりません。
さいごに
仮想売通貨に対する課税は、日本では雑所得に分類され累進課税となっているようですが、オーストラリアではそのような区分は無く、通常の所得税と同じレートで課税されます。
オーストラリアでは、仮想通貨に限らす投資で発生した損失を利益と相殺できますが、日本では、損失を利益と相殺することは出来ません。
仮想通貨に対する税金は、保有した銘柄を売却した際に利益が出た時に発生し、売却の際にオーストラリアドルに替えずに他の銘柄の仮想通貨に替えた場合でも課税対象となることには注意が必要です。仮想通貨の売買をするなら、しっかりと記録を取っておきましょう。
また、$10,000未満の額での売買は、趣味(hobby)として、非課税とする事もできるとも聞いていますが、投機目的で頻繁にトレードする人の場合はこの限りではありません。ケースバイケースで扱いも変わってきますので、その道のプロであるアカウンタントに相談してください。
ATO(オーストラリア国税局)は、仮想通貨の所得隠しに目を光らせています。2020年には国内の約35万人の仮想通貨投資者に正しい申告を行うように注意喚起をしたそうです。特に海外の口座に隠してある仮想通貨の利益が調査の対象となっているそうです。個人情報を登録した海外口座へのお金の流れは国税局が把握できると考えておくべきでしょう。
仮想通貨や株などの投資に関するタックスリターンは、投資のことに精通したアカウンタントにお任せすることをおすすめします。