4月の平日にシドニー近郊のファーム2件を訪れる機会がありました。
ファーム視察ツアーのきっかけ
オーガニック・フロム・オーストラリア
ツアーの企画と手配をしてくださったのは、オーガニック・フロム・オーストラリアの代表を務めるコールス和美(ワミ)さんです。
和美さんが経営するオーガニック・フロム・オーストラリアは、マーケットでオーガニックやバイオダイナミック農法の野菜を販売すると共に、オーストラリアのオーガニック製品を国内外へ販売する事業を手掛けています。
和美さんは、「本物のオーガニック食品を消費者に届けることで、食から人々の生活をよりよいものにする」という強い志を持った方です。
双子で未熟児として産まれた2人の子供たちに栄養を与え、命を救うのにはどうしたらいいのかと、模索して行きついたのがオーガニック栽培された栄養が数十倍凝縮されている食物だったそうです。
それがきっかけで、子供たちの健康はもちろん、自分たちの健康と生活までに良い影響を与えたオーガニック食品をより多くの人へ届ける活動を始めたのだそうです。
販売するだけではなく、自分たちの商品を自分たちの目で確認して選び、自分たちが安心して食べて満足できるものだけを消費者に届けています。
また、経験から得た深い知識で、豊かな食生活の重要性を提案する活動にも力を入れています。
私が和美さんと出逢ったのはシドニーのマリックビル(Marrickville)で毎週日曜日に開かれるオーガニック・フード・マーケットです。
マーケットの和美さんの店で、和美さんが自信をもって販売する野菜や果物や味噌のファンになったのが始まりでした。
和美さんのことを詳しく知りたい方は、オーストラリアとニュージーランドの農業と食べ物の情報サイトWealth(ウェルス)のこちらの記事をご覧ください。
きっかけは沖縄民間大使
今回のツアーはウチナー民間大使の比嘉恵子さんの要望により実現しました。「ウチナー」とは方言で「沖縄」を意味します。
恵子さんは、沖縄のラジオ局、FMよみたんのパーソナリティーでもあり、沖縄料理研究家でもあります。恵子さんについて詳しくは、別記事「シドニー豪寿庵で本場沖縄料理ワークショップ開催【レポート】」をご覧ください。
恵子さんとも和美さんとも知り合いなので、おまけ人員としてツアーに一緒に参加させてもらえたわけです。
バイオダイナミックファーム
和美さんの案内で、シドニーで唯一、バイオダイナミック農法で野菜を栽培するファームであり、シドニーの北のDural(ドゥラル)に位置する、Warrah Biodynamic Farm(ワラ・バイオダイナミック・ファーム)を訪れました。
バイオダイナミック農法は、ビオダイナミック、ビオディナミックと言われることもあり、人智学(アントロポゾフィー)の父である、ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner)が提唱した農法です。
有機農法であることはもちろん、生産の全てを含むシステムがオーガニックであるという考えから、人工的につくられた肥料を使わず、自然と動植物の相互作用の中で作物を育てる農法です。
宇宙の法則に沿って、天体の動きに沿った種まきと収穫を行い、ホメオパシーに基づいた自然の調合剤を使用します。神秘的な響きがするかもしれませんが、自然の理にかなった農法とされています。
殆どが手作業であるため、効率性が重視されないので、収穫された作物の量も少なく値段も高くなるので、この農法を採用するファームは極端に少ないそうです。
日本ではあまり知られていない農法で、オーストラリアでも一般的ではありませんが、バイオダイナミック農法で栽培された野菜を一度食べたら、その違いとおいしさに愕然とするでしょう。私も「自然の食材の味とはこういうものなのか」と感動しました。
このWarrah Biodynamic Farmは、障害者の人達に積極的に労働環境を提供する活動も行っており、インターンシップやワークエクスペリエンス(労働経験実習)も受け入れています。
農場を見学しましたが、全て手作業でとても手間が掛かっています。
皆さん自然と一体化して生き生きと農作業をされているのが伝わってきました。
牛たちも広い牧草地でのびのびとしています。
野菜はスーパーで売られているものとは全く違って、色も良く、葉に厚みもあってあきらかに違います。
直売のファームショップも併設しており、私たちもバイオダイナミック野菜を買いました。後で調理して食しましたが、味わい豊かで、ニンジンなどは皮もおいしく食べられます。「野菜の本来あるべき味とはこういうものなのか」と感激しました。
バイオダイナミック農法を提唱したルドルフ・シュタイナーの人智学の思想は世界中で普及しています。
シュタイナーの思想をもとにプログラㇺを提供する学校、シュタイナースクールがオーストラリアの各地に点在します。自由で創造性を豊かにする教育で、自立する人材を育成するシュタイナースクールは多くの人達に広く支持されています。
日本でも、シュタイナー教育は広く受け入れられており、学校法人として認可されたシュタイナー学園が設立されてから10年以上になります。
ブルーマウンテンズのオーガニックファーム
次に、和美さんが私たちを案内してくれたのは、ブルーマウンテンズ植物園の近く、シドニー寄りに車で10分の距離のBilpin(ビルピン)にあるオーガニックファームです。
ブルーマウンテンズの山並みが見渡せる丘陵地帯にあるファームでオーナーのエディーさんが一人で管理している小規模な農場ですが、ガーデンの芝も手入れされていて美しい景観を醸し出しています。ピクニックや昼寝するのにも最適な環境です。
ここでは、和美さんに出荷される栗カボチャや、非常に手間がかかる緑茶、ゆず、かりん、かき、リンゴ、オレンジ、レモン、プラムなどが栽培されていました。
栗カボチャ、緑茶、ゆず、かりんを栽培する農家はオーストラリアのシドニー近郊では珍しいです。特に緑茶は手間もかかり難しいので栽培する農家は希少です。
エディーさんは人柄も素晴らしく、親切で正直な方でした。ガーデンを解放してより多くの人に訪れてもらうことを計画しているそうです。
3~4月は栗やクルミの季節でしたが、たくさんの人が口コミで訪れて栗とクルミ採りを楽しんだそうです。
さいごに
日本とは違った形の農法で野菜を栽培する、本物のオーガニックのファームを見学することが出来、とても勉強になりました。
農業のことを知らない人でも十分に楽しめる内容だと思います。日本の自治体や組合関係者の視察や学生の研修プログラムとしてもおすすめです。
和美さんのオーガニック、そして、バイオダイナミック食品に対する情熱にも頭が下がりました。
オーガニックを無農薬と勘違いしている人が多く、オーガニックを謳う店の商品にも勘違いしたケースが多々あると言われています。
私の知る限りでは、オーガニックに関して和美さんよりも熟知した人はいません。
この記事の内容に興味がある方は、和美さんが運営するオーガニック・フロム・オーストラリアのサイトもチェックしてみてください。
サイトURLと連絡先は以下の通りです。
オーガニック・フロム・オーストラリア
https://www.organicfromaustralia.com/
Email: info@organicfromaustralia.com